「いろんな可能性を秘めていたいんです」井桁弘恵さんが描く〝しがみつかない〟生き方
100歳を超えて生きる。そんな暮らしが当たり前になるこれからの時代。残りの人生、何をしたいか。自分にとっての幸せとは何か。100歳まで生きた自分に向けた「手紙」を、福岡ゆかりの方々に、綴ってもらいました。どんな想いが込められたのか、真意を探ります。
◆#100レター vol.1 井桁弘恵さん
◆「大人」って、迷う!
——今回、100歳の自分に手紙を書いていただきました。2月に27歳になったばかりの井桁さんは、この企画を聞いたときどのように感じましたか?
「本当に100歳まで生きる時代なんだ!」としみじみしました(笑)。「人生100年時代」って言葉自体は知っていたけど、それがあたりまえになっていくんだなって。あと、これって福岡市のプロジェクトじゃないですか。大好きな地元が市民の長い人生を真剣に考えてくれてることがうれしいというか、素敵だなって思いましたね。
——郷土愛の強い井桁さんらしい視点ですね(笑)。「73年後の自分」は想像できましたか?
うーん……正直、リアルには思い浮かべられなかったかな。ただ、だからこそ「今」の自分にフォーカスしてこれからの人生を考えられた気がします。数年後の自分はどんな道を進んでるんだろうとか、いろんな想像が膨らんで。
——遠い未来をイメージすることで近い未来を考えるきっかけになった、と。
もともと去年くらいからよく考えてはいたんです。学生時代は目の前の学業に取り組むことに一生懸命だったし、それでよかったんですよね。でも、卒業して、お仕事に邁進して、自由に使える時間もお金も増えていくなかで「自分次第でいかようにもできるぞ」と気づいて。
いろいろな道があるし、身の振り方次第で生活を180度変えられる環境にある。……大人って、迷いますねえ。
◆目指すは「なんとかなるさ〜」なおばあちゃん
——お手紙を書いた「100歳の自分」に会えたらどんなことを聞いてみたいですか? やはり、「自分はどんな選択をしたか」でしょうか。
いや、それは知ったら楽しくないので絶対に聞きたくないです! まずは……「井桁家どうなってる?」かな(笑)。井桁家の血が続いてるのか。お墓はどうなってるのか。わたしも姉と二人姉妹ですし、井桁の姓が残るか心配で……。
——おお、思わぬ方向の答えでした。
おじいちゃんのおうちには、ご先祖様の写真がずらりと飾られているんです。軍人さんだったりするんですけど、帰省するたびにご先祖様の顔を見ることができるので、「守られてるな」「つながってきたんだな」と感じます。だから、未来にも続いていってほしい。
——なるほど。今、井桁さんの身近に100歳近い方はいらっしゃいますか?
親族にはいないんですが、ちょうどこの前出会いました! たまたまロケで伺ったお寿司屋さんの常連さんが90歳を超えていらっしゃる方で、ひとりで夕方5時からお寿司を食べて、大将との会話を楽しんでいて。背中もしゃきっとされていて、とても印象的でしたね。わたしも、90歳でふらっとひとりでお寿司を食べに行くような人生を歩みたい(笑)。
——それはぜひ実現していただきたいです(笑)。では、100歳になった自分に対して、「ここは変わっていてほしい」という部分はありますか?
楽観的になっていてほしいかな。「なんとかなるさ〜」って。
——今は心配性?
そうですね、割と考え込むタイプです。考えることは悪いことではないんですが……なんでも笑い飛ばしてくれるおばあちゃんっているじゃないですか。そういう、周りを元気にするような明るいおばあちゃんになりたいんです。笑いじわがいっぱいの。まあ、今はいろんなことをぎゅっと考える時期だと思うので、だんだんゆるんでいくのかな?
◆未来のために、今を犠牲にするのは違う
——現在、バラエティやドラマなど、活躍の場をどんどん広げていらっしゃる井桁さん。これからの具体的なビジョンはありますか?
それが、まったくないんですよ。コロナ禍を経て、計画を立ててもどうなるかわからないし、どうしようもないことってたくさんあるなと思うようになって……。
でもその分、目の前の自分の気持ちを大切にするようになったかもしれません。もちろんじっくり考えて行動することも、未来に向けて種をまくことも大切だと思います。でも、そういう期間であっても、今の自分にとっての「楽しい」がなかったら意味がない。未来のために今を犠牲にするのは、ちょっと違うかなって。
——不確実な未来のために我慢ばかりするのはよくない、と。
ただ、先を見据えてお金の管理は始めています。いつか他の仕事を始めたいとき、ぱっと動ける地盤だけは固めておかなくちゃと思って。
——「やめる」という選択肢もあるんですね!
今はどのお仕事も楽しいし、実際にやめたいと思ったことはないんですが、それこそ「100歳まで同じ仕事をしよう」って気持ちはないですね。いまよりやりたい仕事が見つかったらそっちに移ろう、くらいの心持ちです。
ひとつのことをやり続ける人もかっこいいけれど、わたしはしがみつきたくないタイプ。いろんな可能性を秘めていたいですね。
◆家族にこだわらず、大切な仲間と過ごせればいい
——お手紙の中には、「自分のことをもっともっと好きになれているように。」という願いも書かれていましたね。
はい。100歳になって人生を振り返ったときに、「自分が認めてあげられる自分」になりたいという願いを込めて書きました。
——どうすればそうなれそうですか?
ひとつひとつの事柄に責任を持って、よく考えて選択していけばそうなれるんじゃないかな。逆に、いろんな意見に振り回されたり衝動的な決断をしたりして「こんなはずじゃなかった」と後悔を重ねてしてしまうと、自分を愛せなくなってしまう気がします。
だから、自分を好きでいるためにも「信念を持って決断しつづけること」が目標。そうすればきっと、100歳の自分も「うん、よかったんじゃない?」って言ってくれると思います。
——その過程で、家族を持つことや結婚することにはどのように感じていますか?
んー、わかんない!(笑) 少なくとも最近は、結婚がゴールじゃないなと思うようにはなりました。信頼できる人や話ができる友だちに囲まれたり、人間関係が充実したりしているほうが大切かもって。
—―女友だち、ママ友など、さまざまな絆の形がありますよね。
うちの母がまさに、友だちや姉妹とのつながりが強くてすごく楽しそうなんです。父は父で、会社の人とゴルフしたり長い付き合いのグループで集まったり。たくさんの人と楽しく過ごすことで、結果的に夫婦や家族もいい距離感で仲よくいられるんじゃないかなって感じます。
——井桁さんも、100歳になっても友だちと遊べたら最高ですね!
そうそう、愚痴を言い合ったりもして(笑)。きゃっきゃしてる年輩の方、素敵ですよね。
わたしもそうなれるかな……やっぱり遠すぎてまだ実感がわかないなあ。まずは目の前のことを楽しみます。
<Profile>
モデル/俳優
井桁弘恵(27)
福岡県出身。特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』刃唯阿 / 仮面ライダーバルキリー役で一躍脚光を浴びる。雑誌『MORE』専属モデル、バラエティ番組『おしゃれクリップ』MC、『ヒルナンデス!』水曜レギュラー、J-WAVE「TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY」パーソナリティを務めるなど多方面に出演。また、4月スタートのNHK総合「VRおじさんの初恋」にホナミ役で出演が決定している。