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高校時代から同じ趣味、お笑いができればそれでいい。バイきんぐ小峠を貫くどこまでもブレない軸

100歳を超えて生きる。そんな暮らしが当たり前になるこれからの時代。残りの人生、何をしたいか。自分にとっての幸せとは何か。100歳まで生きた自分に向けた「手紙」を、福岡ゆかりの方々に、綴ってもらいました。どんな想いが込められたのか、真意を探ります。


◆#100レター vol.4 小峠英二さん

◆人も自分も、年齢はどうでもいい

——「まだハゲてますか?」から始まるお手紙、100歳の小峠さんを想像しながら読んで失礼ながら笑ってしまいました。

手紙を書く中で気づいたんですけど、そもそも、年を取ることについて考えたことがなかったかもしれないです。今47歳だけど、ジジイになるのがイヤだと思わないし。50歳になっても「人生の折り返し地点だ」なんてしみじみしないと思うし。

たまに芸人仲間が「あのときのウッチャンナンチャンさん、何歳だってよ」とか言ってたりするんですけど、「へぇー」と思っても焦ったり奮起したりはしないです。ただの数字って感じですね。

だから正直なところ「女性に年齢を聞くのは失礼」って言われてるのも、実はよくわかってない。僕自身が年齢でなにかをジャッジすることがないし、フィルターをかけることもないから。もちろん礼儀として聞かないですけど。

——たとえば、「大人になったな」という感覚もない?

大人になった……衰えは感じます。この前、ある番組で敵をやっつける系のテレビゲームをしたんですけど、相方に「小峠、上!」って言われて僕、バッて天井を見たんですよ。ゲームしてんのに天井見るってヤバイですよね。

あと、買ってきたものを袋から出してそっちを捨てたりとか、普通のレジなのにセルフレジみたいに自分でバーコードを読んで店員さんに驚かれたりとか……。

——よくわからないミスを(笑)。

完全に衰えです。ジジイです。仕方ないですね。

◆お笑い「で」やりたいことはない

——お仕事はいかがでしょうか。単独ライブは何歳まで続けたい、など目標はありますか?

「一生舞台に立つ!」って決めてるわけじゃないんです。あくまでお笑いを続けていくためにやっておくべきことのひとつというか。2012年に「キングオブコント」で優勝したときは日本一になるネタを書く力があったわけで、毎年ライブのためのネタを書いていれば、その能力はある程度キープできるだろうって感じです。

そもそも僕、お笑い「で」やりたいことって特にないんですよ。お笑い「が」やれればそれでいい。お笑いで飯を食うことが小学生時代から掲げてる人生の目標で、今それが実現できてるからもう十分。僕の人生、その一点です。

——そこが満たされていればいい、と。ただ「キングオブコント」で優勝してその夢を叶えるまでに16年間もの下積み期間があったわけですが、振り返っていかがですか?

いやあ、冷静に考えて、0歳の子どもが高1になるまで食えなかったってやばいですよね。マジかよって、怖いでしょ。デビューから13年間は僕がボケで西村がツッコミで、それを逆にしてからうまいこと回り始めたので、当時の自分には「早くボケとツッコミを変えろ!」って言いたいです。

……と言いつつ、下積み、あってよかったですけどね。そりゃ16年は長いけど、短ければよかったとも思わない。お笑いとしてはダメな16年だったけど、結果オーライだと思ってます。

◆好きなことが、30年続いてきた

——年齢は意識していないとのことでしたが、体に変化を感じることもあるかと思います。今、健康について気をつけていることはありますか。

休肝日を作るようになりましたね。僕、めちゃめちゃ酒を飲んで生きてきたんですけど、2022年にコロナに罹ったときはじめて1週間断酒したんですよ。キツいかなと思ったけど意外と平気で。それ以降、酒量は減らしてます。

コロナ禍では8年ぶりに炊飯ジャーを買って自炊も始めたから、我ながら生活習慣がずいぶん変わりました。大変な日々だったけど、長い目で見ると人生にとってはよかったかもしれないですね。

あと健康でいうと、青汁を20年飲み続けてて、ジムには11年通ってて……。

——10年単位! コツコツ型なんですね。

続けることは得意です。続けられない人の特徴、知ってます? ハマると一気にやっちゃうんですよ。「筋トレするぞ」と思ったときに、週3でジムに通い始めちゃう。僕はジムに行き始めたときから、ずっと週1ペースをキープしています。最初に飛ばさない。しんどいときは休む。やりたくても、時間があっても、続けるためにあえてやらない。

——至言です。

これね、相方がガーッとハマっては光の速さで飽きるのを散々見てきて気づいたんです。逆に僕は、気になったものにあれこれ手を出すタイプじゃない。音楽にバイク、本、映画……どれもこれも高校時代にハマり始めて、もう30年続いてますから。この年で続けてることは、多分、これからも続けていくんじゃないですかね。

——100歳になっても同じように楽しんでいたいですか?

いや、現実的に単車には乗ってないでしょ(笑)。100歳のじじいが運転してるでっかいバイク、近づきたくなくないですか? 

——そう、ですね……。

そういう意味で、最後まで残るのは音楽だろうなあ。パンクとかロックは100歳には厳しそうだけど、ジャズは聴いてると思う。行ける限り、ライブにも行きたいですね。

◆100歳までにしたい、たったひとつのこと

——100歳の自分にひとつだけ質問できるとしたら、何を訊きたいですか?

えー、なんだろう……。あ、フジロックのモデルにもなったグラストンベリー・フェスティバルって野外フェスがイギリスにあるんですけど、「はたして俺はグラストンベリーに行けたのか」は聞きたい。行ってどうだったのか、誰を見たのか、どんな曲を聴いたのか。

——憧れのフェスなんですね。

ずっと行きたいと思ってるけど、それこそ死ぬまでに行けたらと思ってるからまだ「いつか」止まりで。「夢はなんですか」って質問には「ない」って答えてますけど、唯一、「グラストンベリーに行きたい」は夢って言えるかもしれないですね。

まあちょっと他力本願なところもあって、自分で行くのは大変だから、詳しい人がチケットとか宿を手配してくれた上で「小峠くん、行こうよ!」って誘ってくれたら最高だな、という。

——最後に。相方の西村さんについて手紙でも言及されていましたが、100歳になってもお付き合いが続いていると思いますか?

どうなんですかねえ。引退してて、お互いそれなりに元気だったら……(考え込んで)コンビ組みたてのころみたいに2人で遊ぶかもしれないですね、うん。仕事をするうちにだんだんプライベートでは会わなくなったけど、仕事で会わなくなったらまた飲むようになるんじゃないかな。だって、もともとウマがあってコンビを組んだんだから。

——素敵です。そのためにも、ぜひ元気に長生きを。

ホントわかんないですけどね。とりあえずお笑いを続けて、趣味を続けて、新しく興味を持ったらそれはそれで好きになって続けて。いまと変わらず、ただただ、何も考えずに年を取っていきたいです。


<Profile>
お笑い芸人
小峠英二(47)
福岡県出身。自動車教習所で出会った西村瑞樹と1996年にバイきんぐを結成し、2012年には「キングオブコント2012」で優勝。これをきっかけに数多くのテレビやラジオ番組に出演している。2021年には「キングオブコント2021」の審査員に就任。音楽好きとしても知られている。