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俳優/声優・株元英彰さんと考える「歯とお口のケア習慣」

さわやかな笑顔が印象的な俳優・声優である株元英彰さん。今回は、日頃から魅力的な声づくりに気を配っている株元さんを迎え、口腔ケアにまつわる様々なお話を伺いました。薬院にある「絹子歯科クリニック.」院長の永原絹子先生にもご参加頂き、セルフケアのコツやアドバイスも交えてお届けします。

永原絹子先生

「歯の矯正」時代に身につけたこと

−まず、株元さんがお仕事で大切にしていることは何ですか?

株元:一番は健康管理ですね。その次に「耳心地のいい声」を出せるよう常に心がけています。僕は役の個性を作り込むことよりも、できるだけナチュラルであることを大切にしています。ドラマやアニメなど現場によって演者に求められることは違いますが、その役についてよく考えながらも自然で魅力的な声を目指しています。

永原:株元さんは人前に立つことも多いですよね。歯には自信を持っていますか?

株元:歯並びには自信があります。実は小学生から中学生まで歯の矯正をしていたんです。もともと自分のあごが細すぎるみたいで「成長とともに様々な問題が起こりかねない」と歯医者さんに言われたことから、早いうちに矯正歯科へ通い始めました。

永原:歯の矯正は基本保険適応外の治療ですが、小さい頃に歯並びを整えられたのは良いですね。歯並びがきれいだとやはり歯周病のリスクを下げられますし、何より発声にも違いが出ると思います。矯正をされていたということは、子どもの頃かなり厳しく歯磨きに対し言われていたんじゃないですか?

株元:はい。当時とても大変だった記憶があります……。歯の磨き残しをチェックする赤い液を歯につけて、鏡の前で全部きれいになるまでずっと歯磨きをしていました。

−苦労されたんですね……。では大人になってからはどんな感じですか?

株元:今は歯を磨いた後に必ずセットでマウスウォッシュをしています。マウスウォッシュは1回やると手放せなくなりますね。

永原:デンタルフロスや歯間ブラシは使いますか?

株元:何か気になればという程度で、常には使ってないです。そういえば、知り合いがマウスウォッシュだけで歯のケアを済ますこともあると話していましたが、それは大丈夫ですか?

永原:それはよくないですね。食べものの残りカスが歯の表面について細菌が繁殖したものをプラークと呼びますが、とてもベッタリしたもので、マウスウォッシュだけでは落ちません。マウスウォッシュは良いものだと思いますが、歯ブラシと併用することをおすすめします。

ちなみに、プラーク1㎎のなかには、およそ300種類1億個もの細菌が存在しています。このプラークの中の細菌は、むし歯や歯周病の原因となるだけでなく、硫化水素やメチルメルカプタンといった臭いの強いガスを発生させて、口臭の原因にもなるので、歯ブラシを使ってプラークを取り除くことが大切です。
歯と歯の間など、歯ブラシでは届かない場所がありますので、デンタルフロスや歯間ブラシも毎日使うことをおすすめします。

株元:食後30分は歯を磨かない方がいいという話も聞きます。それについてはどうですか?

永原:最近よく話題になっていますね。これは、強い酸性の食品を摂取した後に歯磨きをすると、酸によって歯の表面が溶けてしまう「酸蝕症」のリスクが高まる可能性がある、という報告がもとになっています。一般的な食事では、このような酸蝕症は起こりにくいと考えられますので、私はあまり気にせずに「食後必ず歯を磨く」習慣づけの方が大事だと思いますよ。

−株元さんは対面でのコミュニケーションも多いと思いますが、口臭ケアについては?

株元:相手に不快な思いをさせることがないように、エチケットとして本番前にいつも歯磨きをしています。それと関係ないかもしれませんが、現場に行く時よくガムを噛んでいますね。僕的には滑舌が良くなったり、頭が冴える気もしていて。先生、ガムは良いですか?

永原:口臭ケアとして、歯磨きはいいですね。口臭の原因の大部分は、歯周病など口の中にありますので。ガムについては、ガムの種類にもよりますね。糖分が入っていたら虫歯の原因になってしまいます。キシリトールのガムはいいですよ。ガムを噛んでいると、唾液がたくさん出ますよね?それがとても良いです。私はキシリトール100%のガムが大好きで、食後にまずガムを噛んでから歯磨きをしています。

あと、気をつけた方がいいのはのど飴ですね。のど飴が流行り出した頃、本当に虫歯になる人が急増したんですよ。長い時間、口に糖分を含んで過ごすものだから、歯は溶けっぱなしの状態に。なるべく糖分が入ってないものをオススメします。

−口腔ケアで他にもおすすめしていることはありますか?

永原:最近はよく「舌磨き」をおすすめしています。舌は結構汚れているところなんですよね。歯ブラシでは舌を傷つける可能性があるので、専用のクリーナーを使用し洗ってもらえたら良いと思います。その際は、舌を傷つけないように優しく、ふかふかの絨毯の汚れをなでるように取る感じで、奥から手前に磨きましょう。1日に1回程度、起床時がおすすめです。

株元:舌が汚れるとどうなるんですか?

永原:一番は口臭の原因になります。最近では、感染症や誤嚥性肺炎などにも悪影響があると言われ舌磨きの重要性に注目が集まっています。


歯の病気は、予防できる

−株元さんは定期的に歯科健診に行っていますか?

株元:あまり問題がなくて……、東京に来てからほとんど歯医者には行っていませんでした。昨年初めて虫歯が痛んだことから、歯医者へ行くようになりましたね。その治療をきっかけに、今では健診にも行っています。健診はみなさんどれくらいのスパンで行くものなんですか?

永原:お口の中の状態によって違ってきます。毎月チェックが必要な方から半年に一回の方もいらっしゃいますが、最低でも1年に1回の健診を薦めています。また歯の病気というのは生活習慣と密接に関わっていますから、高校から大学、大学から社会人など環境が大きく変わった時には、口の中も変化しやすいので気をつけてほしいです。「どこに行けばいいか分からなかった」と言って健診を怠る患者さんも多いですが、引っ越した時などにはまず近所で歯医者さんを探しておいてもらえたらと思います。

−そもそも、なぜセルフケアだけでは不十分なのでしょう。

永原:歯周病や虫歯は、なかなか自覚症状が出にくいものだからです。歯周病の直接の原因は、プラークに含まれる細菌です。プラークが石灰化して硬くなったものが歯石ですが、歯石は歯磨きでは取り除くことができません。歯科医院で定期的に除去する必要があります。歯石を放置すると、さらなるプラークのたまり場になって、歯周病の悪化につながってしまいます。
歯周病は定期的な健診でしっかり歯石を取ってさえいれば、こうはならなかったのにということが多いです。歯周病は進行していても、歯磨きの時にちょっと血が出るくらいなので軽く考えてしまいがち。腫れることも痛むこともなく、密かにひどくなっていく病気です。患者さんに「気がついたら歯がグラグラしていた」と言われることもあります。そうなったらもう手遅れのことも多くて、抜歯になることも多いんです。

虫歯も同じ、健診で早めに見つけて、虫歯が進行しないよう歯の磨き方から食生活のアドバイスまで行い、最低限の治療で抑えられるようにと思っています。虫歯の状態によってはどうしても削らざるを得ないこともありますが、治療をして終わりではなくて、虫歯になった原因を考えてそれを改善していくことが大切です。

株元:早期発見できるよう、やっぱり健診を怠ってはだめですね。

永原:18歳までは学校などで歯科健診の機会がある方が多いですが、 みなさん自主的に行くとなると、タイミングが難しいようですね。ただ、歯の病気は適切な対策をすれば予防できるものがほとんどです。だから定期的な健診をお願いしています。18歳を超えても最低年1回くらいの健診を当たり前のこととして、歯科医院でのメンテナンスを習慣づけてもらえたらと思います。

−若いうちからメンテナンスを習慣づけると、具体的にどんな良い点があるんですか?

永原:歯は1本失うと、その周囲にも影響を及ぼすものなので、最初の1本をなくさない心がけが必要です。年齢を重ね、歯が数本なくなってしまった時からではもう取り返すことができません。だからこそ全部揃っている10代の頃から、自分の歯を生涯守っていこうという意識を持っていてほしいです。

また歯磨きは我流だとプラークを残してしまっていたり、必要以上の力で歯を傷つけてしまっていたりすることも多いです。きちんと歯科衛生士さんに歯磨きの指導を受けて、若いうちから上手に日々のケアをしてもらいたいです。

歯周病は万病のもと

−お話に何度か出てきた歯周病ですが、本当に怖い病気だと聞きます。歯周病が私たちの体におよぼす影響とは何でしょうか?

永原:昨今、歯周病のリスクが話題になることが増えました。歯周病は万病のもと、歯周病から誘発されるものとして糖尿病や心臓疾患、認知症などがあり、全身に大きな影響を及ぼすと言われています。

株元:とても怖いですね。歯の健康を意識した行動を常に忘れないようにしたいと思います。ちなみに、歯が悪くなると発声や発音にも影響しますか?

永原:影響します。例えば、どこかの歯がかけたり、抜けたりすることによって息がもれてしまうことがあります。あと発音の際、前歯と舌を使って声を出しますよね。前歯の上下どこかにトラブルがあったら、なかなかうまくいかないものですよ。以前うちに来ていた声楽家の患者さんにも、声の出し方が変わるので歯の形は変えたくないですと言われました。

株元:切実な思いを感じますね。

−株元さんから何か先生に聞きたいことはありますか?

株元:自分の歯の黄ばみが少し気になっています。先日かかりつけの歯医者さんにホワイトニングした方がいいかどうかを相談してみました。その先生は僕の歯を診て、「これくらいは普通だよ」と。そして一度ホワイトニングをすると歯の着色がつきやすくなることや、今より手入れが必要になることを話してもらいました。以前から真っ白な歯に憧れがあるんですが、自然な歯の方がいいとも思いますし……悩んでいます。先生はどう思いますか?

永原:株元さんの先生がおっしゃっていたように今の色味くらいでしたら白い方だと思います。私も患者さんから憧れの芸能人を参考に「こんな風に真っ白にしたい」と依頼されることがあります。なかなかホワイトニングだけで真っ白にするのは難しいですけど、今より白くなる可能性はあると思います。

ホワイトニングをすることで白い歯を維持する努力に繋がるとも思うので、ホワイトニングの注意点は理解した上で、試してみるのも良いと思います。

株元:そうですよね。あとひとつ、もともと赤ちゃんには虫歯菌はいなくて、大人から虫歯菌をもらうから「赤ちゃんにキスをしちゃいけない」という噂を耳にしたことがあります。ある年齢まで大人の唾液を子どもの口に含まなければ一生虫歯にならないとかも聞いたことがあって、それは本当ですか?

永原:確かに、早いうちに虫歯菌を伝えない方がいいとは言われていますね。両親などお世話をしてくれる人から感染してしまうことが多いと言われています。とはいえ、私は自分の子どもにキスしたりしましたよ。同じスプーンを使うこともありましたし、みなさんきっと赤ちゃんとしっかり触れ合いたいと思うんですよね。

だから親になる人が前もって口腔ケアに気をつけておくことが大切だと思います。うちでは妊娠出産を控えた女性の健診をとても大切にしていて、妊娠出産前までに虫歯や歯のトラブルをできるだけ解決しておいてもらえるよう努めています。

磨きすぎに要注意!正しい口腔ケアとは

−正しい口腔ケアについて教えてもらえますか?

永原:1日1回はしっかり汚れを落とす時間を設けましょう。タイミングについては、私は夜をおすすめしています。どうしても寝ている間に口の中の菌が増殖してしまうので、寝る前にできるだけ口腔環境を良くしておくといいですね。1本1本ていねいに、プラークの残りやすい奥歯や歯の間、歯と歯茎との境目も意識しながら、自分がきれいになったと思えるまで磨いてください。

所用時間は人それぞれだとも思いますが、目安は10分程度。その時は歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなども使って隅々まで磨きましょう。歯と歯の間の汚れは歯ブラシでは半分程度にしか落とすことができませんから。

株元:歯磨きの回数は1日何回くらいがいいですか?

永原:食事の回数にもよりますね。株元さんはどうされていますか?

株元:僕は3〜5回くらいですかね。1日に何度もシャワーを浴びる癖がありまして(笑)。仕事の合間に時間があれば、気持ちのリセットもかねて体を洗うんです。その時に歯も磨くので、回数が増えてしまっていて気になっています。

永原:ちょっとやりすぎかもしれない…(笑)。年齢が上がると歯茎が痩せたり、歯の表面のエナメル質にヒビが入ったりするので、歯を磨く時の力加減に気をつけてください。歯ブラシの圧力でダメージを与え続けてしまっている可能性があります。食事の後に必ずプラークを落とすことが大切ですので、朝昼夜の食後3回くらいがいいかもしれませんね。

株元:これから気をつけてみます!今日先生と色々なお話ができて、仕事にも健康にも、歯がいかに大事か改めて痛感しました。「症状が出たから行く」ではなく、定期的に歯医者さんに行きたいと思います。先生のケアなどプロが実際にしていることも学ぶことができ、本当に良かったです。堂々と演技をしたり、いつまでも口を開けて笑えるよう、今後はもっと歯の予防に気をつけたいと思います。


プロフィール
株元英彰(俳優・声優)
1989年生まれ、福岡県出身。2012年劇団プレステージに入団し舞台を中心に活動開始。2022年8月退団。現在Apollo Bay所属。アニメやゲームなどの声優活動も行う。代表作:アニメ「ドリフェス!」黒石勇人役、「風が強く吹いている」ムサ役、「ハイキュー‼ TO THE TOP」宮治役。朗読劇「風の聲」(2021年)、舞台「ROOTERS-応援者たち-」(2022年)など。


「デンタルチェック18~20」
歯と口の健康は、歯磨きなどのセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが重要です。福岡市と福岡市歯科医師会では、18歳~20歳の方を対象とした無料の歯科健診を実施しています。
受診した方には歯ブラシセットをプレゼントしています。※数に限りがあります。詳しくはこちら

「歯は100年のパートナー」
歯と口の健康は、全身の健康や、食事・コミュニケーションなどの日々の生活の充実に密接に関わる重要なものです。
福岡市では、28本(親知らずを除く)ある永久歯を生涯健康に保ち、健康寿命の延伸とWell-beingの向上につなげるため、治療よりも予防に重点をおいた、世代ごとの特性に応じた歯科口腔保健の様々な取組みを、「オーラルケア28(にいはち)プロジェクト」として、産学官オール福岡で推進しています。
福岡市ホームページ では、オーラルケア28(にいはち)プロジェクトの取り組みやSNSで人気の「歯のマンガ」による書き下ろしマンガなどを掲載しています。詳しくはこちら