初めてのエンディングノート、終わりを考えたら今日が見えた。
わたしの「終わり方」の理想
福岡市さんよりいただいたエンディングノートをきっかけに、わたしのこれまでとこれから、そして最期について初めて、考えてみた。
いま、この瞬間にも世界中のどこかで、赤ん坊が大きな産声と共に生まれてきている。それは、ここ福岡でかもしれないし日本の裏側にあるペルーでかもしれない。
そしてまたどこかで、命を終えている人もいる。
特に訳があるわけでもない。けれど、中学生の頃から、お風呂でのぼせそうになる度に発作的にこんなことが頭をよぎる。もしかしたら、自分に言い聞かせているだけなのかもしれない。わたしがその一瞬を生きることを忘れないために。
わたしの終わりの会に足を運んでくれる人たち。ひとしきり儀式を終えたら、お酒を片手に少し冷えたオードブル料理を囲む。
「もうしおは充分やったわよ。」
だれかがこう言ってくれれば、
もし仮に泣いてくれている人がいて、その人をだれかがこの一言で慰めてくれれば、
わたしの人生は「よくやった。」だ。
「悔いる」ということをしたくないし、させたくない。
福岡市さんからいただいたエンディングノートを広げる。ぐるぐる想像する、わたしが終わるまでを。
田舎でのふつうの生活を夢見る22歳
この春、4年間通った大学を卒業する。
そしてこの春、いちからはじめる。パートナーのかつをと二人三脚で、世界をつくる。世界といっても大それたものじゃない。ちいさな、いつの間にか隅にあった世界。
どんな世界か、と聞かれると、うーん、むつかしい。それは空間でもあれば、ものでもあれば、概念でもある。
生活を味わうということ。
自分らしくいられること。
そんな空間を、それが当たり前の世界をつくりたい。10年、20年、30年かけて。
ふたりがおばあちゃんおじいちゃんになったら、これまでつくったものたちと一緒に、だいすきな福岡で生活する。
かつをとは先のことについてよく話す。ドライブ中、食事中、お散歩中。ほとんどがその話なんじゃないかというくらい、どちらも未来をつくることが好き。
「福岡でいっぱいの緑とすきなものに囲まれて暮らしたいね。」
わたしはミシンをカタカタ。着るものは自分でつくる。隣では新しいものには目がないかつをが最新メカをいじってる。あたらしい季節がきたら、ふたりでお庭のくだものを眺める。さくらんぼ、みかん、柿あたりがいいなあ。食べるものも自分でつくる。そしてたまに、ふたりで旅する。わたしはとびっきりのワンピースを纏って、かつをはいつの間にか重たくなったカメラを首からかけて。
その先は…
最期を考えたらはじまりが見えた
家族に迷惑はかけたくないので介護が必要のないくらい健康に過ごしたい。
けれど、そうはいかないから大変なのだろうなあ。
もしも、病気になったら最期は病室ではなく自宅で迎えたい。職業さえぼんやりしているわたしには、遺産をどうするかは分かりっこない。葬儀の時の宗派はなににするか、なんてのはサッパリ。家族に相談しなきゃ。だれかに渡したい、残しておきたいものは特になくて。これからつくるかもしれない何かを好いて欲しいと言ってくれるひとがいれば、それは大歓迎。
こんな人生物語の真っ只中、終わりを考えたら、今日が見えた。
周り任せな、流れ任せなゆらゆら不安定なものではなくて、わたしの心と足で決めるしっかりした今日。
これを終活と呼ぶのだろうか。
エンディングノートがわたしの今日を開いてくれた。
わたしのエンディングノートメモ
エンディングノートは第7章まで。今のこと、最期のこと、そして終わった後のこと。テーマに沿ってひとつひとつ答えていく。わたしがいま考えられる、必要だと思ったページに書き留めたこと。
第1章「わたしのこと」
ーおもいで・あしあとー
【誕生時】
両親が海のしおの音のように寛大におおらかに育ってほしいという想いを込めてつけてくれた。
【幼少期】
用心深くてお利口さんだったけれど、明るくおてんばなところもあったみたい。
【青春時代】
お調子者で面白い、頼りになる友達に出会えた。
【これまで住んだ場所】
福岡。これからもずっと福岡に住みたい。
ー今のわたしー
【趣味】
読書、洋服づくり、編み物。
【好きな食べ物】
鯛のお茶漬け、いちごみるく、サーモン、オムライス。和食全般。
【好きな花】
かすみ草、チューリップ。
【好きな音楽】
カネコアヤノさん
【好きな本・映画】
田辺聖子さん
【宝物・コレクション】
本とお洋服、可愛いぬいぐるみ。
【つづけたいこと】
お洋服づくり
【これからやりたいこと】
旅、個展や美術館巡り
【行きたい場所】
フランス
【会いたい人】
おばあちゃん
第2章「もしもの時は」
ー病気の時はー
【告知について】
病名と余命を併せて知りたい。
【終末医療について】
だいすきなおうちで受けられるといいな。
ー介護が必要なときはー
【介護してほしい場所】
空気の澄んだ田舎
【介護の費用】
用意する
(エンディングノートより抜粋)
そのほかにもたくさんの質問が詰まっていたノート。
今答えられるものもあれば想像もつかないものもあったり。インターネット上には情報が溢れているけれど、本当に必要なことって歩いてきてはくれないのだなあ。
エンディングノートは「あ、こんなこともあるんだ」と知るきっかけをつくってくれた。
ひとつひとつ考えることは大切だけれど、あまり気負わず。わたしはこのノートを保管して10年ごとに開いて少しずつ埋めていけたらいいなと思う。
22歳と24歳のふたりで、数十年先のことを想像したこと。
これはきっと、わたしの未来、そしてふたりの未来の力になったはず。
みなさんもエンディングノート、ぜひ手に取ってみてね。
ふたりclip しお